少し寝坊してしまって家を出る。目的地は遠く、千葉県野田市である。東武野田線愛宕駅近くに、欅のホールという会場がある。そこで先日も東庄町まで出かけていった千葉県の老人クラブ主催行事、なのはなシニア演芸会が開かれるのである。東庄町では代演で三代目春日井梅鶯が出たが、野田では玉川太福・玉川みね子の本来のコンビである。
えっちらおっちら移動して愛宕駅にやってくる。折悪しくも雨で、この日はJRがあちこちで運転見合わせするなど、たいへんなことになった。駅から欅ホールまでは1kmくらいで、歩くしかない。雨の中覚悟を決めて歩いていくと、ちょうど最初の大神楽が登場したくらいの頃合いで会場についた。
ホールのある階まで来て演芸会に入りたい旨を伝えると、老人クラブの方ですか、と聞かれる。違うと答えたら怪訝な顔をされた。外から来る人間というのはやはりほとんどいないのだろう。しかし東京かわら版に出ているからには公開のイベントなのである。ちゃんと二千円で当日券を売ってくれた。
ホールに入ると丸一の大神楽真っ最中。邪魔にならないように座って、太福さんの出番を待った。やがて交替となり玉川みね子さんの弾く三味線で太福さん登場である。
この日のテーマは、老人クラブというアウェイの場でいったい太福さんは何を掛けるのか、ということだった。「祐子のスマホ」ではないだろう。会場のお客さんはほぼ玉川祐子さんに近い世代なのだ。新作でなければ古典だが、千葉らしく天保水滸伝か、と思って見ていると「清水次郎長伝 石松三十石船道中」に入った。しかも最初に外題付けを唸って「広沢虎造」を観客に当てさせてから、というサービス付きである。なるほど、これは正解だろう。「三十石」は玉川の持ちネタでもあるのだ。ちょっと広沢とは違う箇所があるが、持ち時間が短いのでそこは飛ばしてしまえばいい。昔の浪曲ファンもいるであろう老人クラブのお客さんにはぴったりだ。感心しながら聞き終えた。
そのあとは東庄町と同じく抽選会だった。油断していたら、ジップロックが当たってしまう。前回東庄町でティッシュボックスが当たったので、今回はないだろうと思っていたのだ。ぼんやりしていたら司会のふじ健介さんから「お父さん、手を挙げるのが遅いよ」といじられた。お父さん、と呼ばれるのもひさしぶりである。
そこから出て駅に戻り、東武線で柏駅へ。柏駅から一駅東京側に戻った南柏駅で編集I氏と待ち合わせである。このあと14時半から柏駅である方と打ち合わせの予定なのだ。柏で打ち合わせなのになぜ南柏で待ち合わせをしているのかといえば、ここで古本市が開かれているからに決まっているではないか。言わずもがなである。
それほど大きくない会場なのにすぐに見終わってしまう。先日西部古書会館で「少年チャンピオン」の『マカロニほうれん荘』掲載号を買った茶々文庫が、また同誌を出していた。今度は『マカロニ2』の掲載号である。これは仕方ないので買う。仕方ないではないか。
柏駅まで戻り、駅ビルの中にある喫茶店で来年出す予定の本について某氏と打ち合わせ。終わった後でI氏と太平書林に行ってみたが、臨時休業だった。大雨だからだろう。仕方がないので二人で常磐線に乗る。
と、車内でI氏が余計なことを言い出した。以前は神保町にあった古書かんたんむが、この5月から台東区に店舗を出しているというのである。御徒町から歩いてもそう遠くないところだそうだ。急いで検索してみると、GoogleMapには出てこない。I氏曰く、最近過ぎてまだ登録されていないのではないか、とのこと。となれば行ってみるしかないだろう。I氏は会社に帰るというので打ち捨てて、上野駅から御徒町まで移動した。御徒町から雨の中をじゃぶじゃぶ歩き、湯島ハイタウンという大きな集合住宅の建物までやってくる。このA棟2階に古書かんたんむは入っているのだ。
来てみて気づいたが、どう考えても湯島駅のほうが近かった。常磐線で降りずにそのまま来たほうがいいのである。これから行く人はお気をつけを。
古書かんたんむに入る。店内はまだ未整理の部分が多く、棚もカテゴリー分けがされていない。開店から一ヶ月ではそうだろう。新書の棚にイフノベルスの『クリスティー傑作集』を見つけたので買うことにした。初めて見る帯付きだ。200円である。
太平書林の仇を古書かんたんむで討つ。これにて気が済んだので、おとなしく帰宅。夕食の時刻まで真面目に仕事をした。本日は一つ原稿を送ったので勤務評定は0.5、ただしほとんど無料みたいな仕事なので目標金額への進捗率は変わらず、である。しかしぼちぼちと進展はあった。私以外の営業だと、進行中の某社からこちらの申し出を受けてくれるという返信があり、ほっとする。また、原稿を見てもいいと言ってくれた出版社から企画書が先に欲しいと言われたので著者につないだ。これを送ってなんとかいい部署に紹介してもらえればいいのだが。そんなわけでうろうろ歩いて疲れた一日であった。