杉江松恋不善閑居 私に命令しないでください。お願いね。

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某月某日

かなり切羽詰まった状態だったのだが、まずインタビュー構成を一つ片づけた。右の肩の荷が下りる。すとん。続いて文庫解説に取り掛かる。実はこれが書けなくてずっと呻吟していたのだ。最初から順番に書こうと思っていたのだが、無理だと諦めて途中から始めた。そこから書いて尺を稼ぎ、前を継ぎ足そうと思ったのだ。ところが、書いているうちにここが最初でいいんだ、と納得する気持ちが出てきた。文章とはそういうもので、独立した形と論理性を備えているので、ある程度の時間付き合っていると、生き物のように動きだし、自分の生存権を主張し始める。よしよし、それでいいからちょっと待っていなさいと、最初から読み返してみる。たしかにそこが頭でもおかしくないのだが、前段にもうひとつ話題を付け加えたほうが読者には親切だし、ためも効いて今書いていた部分への興味も掻き立てられる。そういうことを今書いた文章に説明し、納得してもらう。じゃあ、二番目でいいよ、二番目で。そう言ってくれたので、すかさず前に文章を書き足した。これでもうほとんどできている。あとは前後に導入と結語をつけたらおしまい。やってみたら4時間も経たずにできてしまった。ずいぶん早かった。左の肩の荷が下りた。すとん。

2本原稿を書いたので勤務評定は1.0。この2本の原稿料で7月末までに稼がなければならない額への進捗率は105.67%に達した。まだ月末まで時間があるので、上積みをすることにする。8月には紅楼夢の同人誌も入稿したいので、その分を7月に載せる。というわけで現時点での進捗率は89.16%である。もうちょっとがんばる。

溜まっていたメールを見たら、中に命令調で物を言うものが混じっていた。ひとから命令されたのはひさしぶりだ。フリーランスのいいところは、あまり命令されないことである。人から自由である分、リスクを引き受けて不安定な状況に甘んじているのである。

そういう人間に命令口調で物を言うのは駄目ですよ、と言いたい。たぶん見てないと思うけど。とりあえずその命令は無視する。次に同じような物言いをしたら縁を切る。なんで縁を切られたのか本人はわからないと思うが、そういうことである。何かしてもらいたいなら、命令ではなくて「お願い」するように。よろしくね。

それにしても命令はされたくないものである。このままいけばされずに済むはずだが、例外もある。法を犯して人権を制限されることにでもなったら、命令されても仕方ない身の上になってしまうのである。いやだいやだ。だから絶対に違法なことはしない。

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