某月某日
なんとか2本原稿を書いて送った。これはレギュラー原稿で、イレギュラーがはみ出してしまう。編集者に送れるお詫びのメールを送り、外出する。肥後琵琶と浪花節の会なのである。
いつものアートスペース兜座近辺に来てみると、太鼓の音がしてやたらと賑やかである。盆ダンスと書いた立て看板がある。なんと、盆踊りの日であったか。防音があるから太鼓やお囃子で聞こえなくなるほどではあるまいと思いつつ、会場へ。
いつもは和室の5階を使っているのだが、そちらは今回上方落語の桂慶治朗さんが会をされているため、6階の洋室に向かう。こっちを使うのは初めてなので、まず舞台をどうするかから考えなければならない。エレベーターで後藤昭子・岩下小太郎のお二人と一緒になった。
上に着くと、もう港家小ゆき・広沢美舟の浪曲勢もいらっしゃっていた。一緒に考えて、向かって左にテーブルを置き、右に高座を組んで曲師もその上、ということで話はまとまった。テーブルをやや高くしなければならないが、踏み台を置いて浪曲師の丈を上げればいい。ばたばたと準備をするうちに時間が経ち、あっという間に開場時刻になった。
岩下小太郎さんは早くも高座上で、いらっしゃるお客さんを待ち構えている。その場で肥後琵琶レクチャーである。入ってきた人、驚いたろうな。
演目は以下の通り。
肥後琵琶・膝枕(今井舞子・作) 小太郎
うしえもん 小ゆき・美舟
道成寺 昭子
「うしえもん」は熊本出身の小ゆきさんが郷土の英傑・宮崎滔天を描いた新作である。滔天は清国を共和国化することを手始めに世界革命を起こすことを夢見ていたが一旦挫折、その後は浪花節語りに転じて桃中軒雲右衛門に師事する。芸人の資質はあまりなかったようで数年で廃業するのだが、その間に再び機会があって孫文の活動を支援するようになり、辛亥革命にこぎつけた。「うしえもん」は滔天の浪花節時代を描いたものである。啖呵がおもしろく、小ゆきさんの節に題材もぴったり。もっと掛けてもらいたいネタであうR。
「膝枕」は今井舞子さんが「世にも奇妙な物語」用に書いた脚本が元で、浪曲で東家三可子さんが演じているほか、さまざまなメディアでも拡散している。その肥後琵琶版だ。「道成寺」は安珍・清姫の悲劇を描いたもので、後藤昭子さんの師匠・山鹿良之さんの十八番だった。節に聴き惚れてあっという間に終演である。
告知からあまり時間がなかったのに、いらっしゃってくださったお客様には感謝申し上げたい。これからも肥後琵琶チームが来京されるたびに会を企画しますのでお楽しみに。
本日から一泊で山梨県に行ってくる。次の更新は明日の夜、くらいかな。