杉江松恋不善閑居 「浪曲で生きる!映画祭」二日目と沢村さくら&天中軒すみれ「曲師の会」

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某月某日

午前10時に家を出て、渋谷へ向かう。ユーロライブ渋谷で「浪曲で生きる!映画祭」観覧と、14時の上映回後にプロデュースの玉川奈々福さんに対談のお相手としてご指名いただいたので、そのためである。上映は12時の「浪曲師 葵わか葉リターンズ」からなのだが、ユーロライブの下にあるカフェで、『芸人本書く列伝』の担当Yさんとゲラの受け渡しをするのである。渡して、はい、おしまい、ではなくてチェックがあるのであっという間に時が過ぎていく。気が付けばぎりぎりで会場へ。

「浪曲師 葵わか葉リターンズ」は、とにかくわか葉師の声量に圧倒される。前回観たものに少し編集が入っていて、わか葉師物故の情報が加えられていた。14時の回は「浪曲師物語 木馬亭の浪曲師たち」。四代目東家山楽、木村若友、五月一朗といった、私が生の舞台に間に合わなかった達人たちを眩しく観る。

終演後に30分ほど奈々福さんとトーク。実はものすごくたくさん資料を持って行っていたのだが、ごく一部しかお客さんにはお見せできなかった。現代の浪曲はいろいろ新しい試みをやっていてぜひ応援したいが、過去の浪曲全盛期にあって、今それがないのは寂しいものがあるので、ぜひ挑戦してもらいたい、というようなことを話した。その一つが大きな劇場での公演と地方巡業で、こればかりは浪曲師だけの努力ではなんともならないので、手を貸す人がたくさんいないといけないと思う。そんなこんなのことで熱中しているうちに、お時間。最後に、劇場にいらしてくださった方への特別ボーナストラックも聴いていただいた。これ、ご本人に了承いただいたらネットで公開しようかな。

つたないトークで失礼しました。話したいことはたくさん準備していたのに、こちらの技術不足でまとめきれませんでした。いずれまた、別の機会に。

終演後はいったん帰宅し、浪曲資料を置いてからまた外出する。浅草公会堂で沢村さくらさんの「曲師の会」なのである。曲師という観点から浪曲を眺め直すこの会、他にないおもしろさがあるので、ぜひ本にまとめてもらえないものだろうか、という話をさくらさんにするつもりがまた忘れてしまった。

今回は、節のずれからくるグルーヴ感や啖呵と節の境目を曖昧にする効果などについて、天中軒すみれさんとさくらさんが語り合う内容であった。ちょうど昼間、奈々福さんとお話しした中に、浪曲はもっと啖呵から節に入るパターンが多彩だったはずなのに、今はけっこう固定化されているのではないか、というようなことを言ったばかりだったので、個人的に興味深く聞いた。

後半はすみれさんの義士伝浪曲「琴の爪」。真山成果の戯曲が原作で、たしか芦川淳平さんが脚本ではなかったか。義士切腹の日に起きた出来事を切なく描く。

終わって浅草で少し飲んで帰る。想像以上に疲れていたらしく、散財になるがタクシーで帰宅した。二日間浪曲漬けで楽しかった。またがんばるよ。

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