杉江松恋不善閑居 三浦海岸・古本屋汀線

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某月某日

7月最終日なのだが、相変わらず仕事がうまく進まないのであきらめて外出する。いや、最低限のことはしているのだけど。

向かうのは神奈川県三浦半島である。京急線の終点、三崎口と三浦海岸駅の中間あたりに古本屋汀線というお店がある。比較的新しくて、まだできてから1年ぐらいだろうか。普段は事務所営業だけなのだが、月に1週間だけそれを開放して店舗に客を入れているのである。本日は7月度の最終日。これは行っておかなければならない。

出たのが遅かったので、三浦海岸駅に着いたときには16時をまわっていた。17時閉店のはずなので、急がなければならない。バスを待っていると遅くなるので、運よく止まっていたタクシーを使うことにする。きっかり千円分走ったところで到着、周囲には畑が広がっている真ん真ん中で、運転手もこの人はどこへ行くのやら、という顔をしている。いや、古本屋があるはずなんですよ、このへんに。

タクシーを降りてちょっと行ったところに左へ下る坂道があった。その柵に「古本屋」と描かれた板がくくりつけてある。よかった、ここでいいのだ。

坂を下りていく。突き当りは竹林だが、その道左側に民家が並んでおり、手前側が古本屋汀線であった。想像していたのと違う。益子ハナメガネ商会のような靴を脱いで上がる一軒家タイプなのである。

入ってみると、まずは土間。ここに均一棚があり、すぐのところは奥にコピー機が置いてあってその前が机。机上にも本が並べられている。次の部屋に続くところに児童書。

その左側にある部屋が主部ということだろう。入ってすぐ右に漫画のコーナー、奥に思想書の棚があり、左側は文学棚で、部屋の中心に民俗学や博物学などの本を置いた低めの棚がある。帳場は入って左前方、その手前にも郷土史などの棚がある。ここで瞽女画家・斎藤真一『絵日記 瞽女を訪ねて』を見つけた。大型本で、前から欲しかったものだ。2500円だが、美本なので高くはない。帳場に本を差し出してお金を払うと、2000円以上の購入者にはサービスということでトートバッグをいただいた。

各棚の前には低い椅子が置かれており、落ち着いて本を眺められるようになっている。ぐっと寛げる雰囲気がいいし、何よりも硬めのものから美術書や雑誌まで取りそろえた品ぞろえが魅力だ。ちょっと遠くはあるが、また足を運びたい古本屋一つ増えた。

バスで三浦海岸駅まで戻り、京急で帰る。途中でゲリラ豪雨に遭ってしまったが本は無事だった。体は濡れた。体は乾けば元通りだが本はそうではないので、これでいいのである。

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