杉江松恋不善閑居 総武本線最東端の古本屋・八日市場「ワンブック」

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某月某日

仕事が一段落したともしてないともいえる感じなので、ちょっと気分転換に出かけることにした。青春18きっぷを持って千葉方面へ。東京駅から総武線快速に乗り、千葉駅で銚子駅行きの総武本線に。ここから約1時間半ほど行くと銚子市の隣、匝瑳市に入る。匝瑳市には二軒の古本屋があるはずなのだ。

そのうちの一軒が11時に開店するという。まずはこちらから攻めるのである。飯倉駅で降りる。これはいいくらではなくて、いいぐらと読むのである。無人駅で、一緒に降りたのは一人だけだった。どこかに行こうとしているようだが、駅の周辺に公共交通機関は見当たらない。携帯電話を取り出して連絡を始めた。どうやら、車で迎えに来てもらう算段をしているようである。

私の行く場所は徒歩圏内である。駅を出て北に進み、太い道に行き当たったら数百メートルほど東に進む。そこにあるのが古本とお宝のクルクル、のはずなのだが開いていない。11時から営業で、定休日は木曜日だとGoogleMapには書かれていたのでそれを信じてやってきたのだが、開いていない。貼り紙がしてあって、どうやら今は水木が休みで、営業時間も12時~18時になっているらしい。休みか。では仕方ない。ガラス戸の向こうには棚があるが、白い布をかぶせられてその下は見えない。ソフビなどおもちゃ類がたくさんあるようだ。平台の上には漫画が並べられているのも見えた。中に入ればおもしろいものが見られそうである。だが休みでは仕方ない、出直そう。

しょぼんとして駅まで戻ってきた。ひとけのない駅だが、総武本線の発着時刻が近くなると人が集まってくる。人波というほどではないが、集まった流れに乗って来た列車に乗る。だが気が付いた。反対方向だ。うわっ、下りのはずが上りに乗ってしまった。

単線の駅なのでホームが一つしかない。上りも下りも一緒なので、間違えたのだ。頭の中で、今日はツイてないからもう帰っちまおうぜ、という悪い囁きが聞こえる。ううん、それもそうかも。一瞬気弱になったが、まだ下り列車が来ていないということは間に合うかもしれない、と気を取り直した。次の横芝駅で上りの特急列車と行き違うために停車する、とアナウンスが入った。入構して見れば、階段を上った向うのホームに同じ色の列車がいる。これが特急を通した後に発車するのだろう。まだ間に合う。やれやれ。

本来乗るはずだった下り列車を捕まえ、東へ戻る。さっきまでいた飯倉駅を通り過ぎ、八日市場駅へ。ここに、総武本線最東端の古本屋があるのだ。

駅を北側に出ると、さっきの飯倉よりは確かに栄えている。なんとマクドナルドまであるではないか。充電ができる席がその中にあったので、コーヒーを飲みながら開店時間を待つ。目指す店は13時半に開くのである。ほら、シャッターにも書いてある。実はマクドナルドのカウンター席からは、その店が丸見えなのだった。定時に開くか、と見守っていたら、やがてシャッターが開き、中から高齢の女性が出てきた。開店準備をしているらしい。よかった空振りにはならないで済みそうだ。

13時半、行動を起こす。

目指す店はワンブックと言って、ホームページを見ると不動産取引など手広くやっている会社の経営らしい。店頭には色褪せた本を並べた均一棚があるが、ここの主力はカードゲームとドローンらしい。え、ドローン。そう、ドローン。店の前にもドローンの入荷に関する貼り紙がある。けっこう売れているようなのだ。

お店に入ると、いきなりゲーム棚である。右側が帳場になっていて、さっきの女性がそこにいる。棚は小腸のように折れ曲がって奥に続いており、入り口近くがプラモデルやグッズ、その奥にレコードやLD、VHSといった昔のソフトゾーン、ゲーム攻略本や画集・写真集のゾーンがあって、その奥は延々とコミックの棚である。そこに一般書がところどころ混じっているという感じだ。雰囲気として宇都宮線野木駅前のワニワニ堂に近い。同人誌も扱っていて、2020年の東方紅楼夢ポスターが貼られていた。もしかして、と思って見たが同人誌のジャンルは私の趣味とは重なっていなかった。残念。

さて、なんでも買おうと思えば買えるのだが、グッズは不用意にジャンルを増やすと後が困る。どうしようかと思って見ていたら、食玩と思われるコーナーがあり、バンダイの無敵鋼人ダイターン3ミニモデルが置かれていた。というか、箱を開けないと中はわからないのだが、「ダイターン3」という貼り紙がしてあるので、たぶん中はそうなのだろう。帳場の彼女を信じることにする。

写真はエルガイムだがダイターン3が入っている、はず。

帳場に持っていってお勘定をお願いした。定価は300円なのだが、値付けがされていない。女性はしばらく、うーんと考えて「290円」と宣言した。はい、わかりました。ダイターン3だと思われるが箱を開けるまではわからないシュレディンガーのようなおもちゃに290円。高くはない買い物である。

というわけで総武本線の古本屋ツアー、匝瑳市篇は一勝一敗であった。ちょっとだけ続く。

クルクル。定休日で入れなかった。またくる。

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