総武本線の八日市場から引き返してくる途中、都賀駅で降りた。千葉駅から二つ目、初めて降りる駅である。駅から西へと進む道はなだらかな坂になっており、くだっていく。途中に廃業したレンタルビデオ屋の建物が出現した。まだ平成の残滓が消えずにある。
坂道を下りきる手前、途の右側に出現するのがトルバ堂書店である。初めて来た。
坂の途中ということで、半地下構造になっている。数段降りて入るのだが、道側との段差に合わせて棚が置かれており、古い食器などが並べられている。アルマイトの弁当箱など、懐かしいものが。ガラス窓にはホーローの看板など旧いものが飾られており、店の性格を表している。扉を開けるときは迅速に、かつすぐに閉めなければならないと事前に学んできた。猫が店内にいるので、開け放していると出てしまうらしいのだ。
店に入って最初に目につくのは壁に飾られている柱時計の数々だ。ほうぼうにガラス張りの陳列棚があり、切子などが飾られている。棚は腰くらいに低い、書店にあるようなものが左に一列、それよりも高い胸くらいの高さのものがその横に二列配置されており、五つの通路ができている。小説の単行本は少なめで、いちばん右の通路が文庫と成人向けのゾーンである。その横の二列はコミックスが多く、左側が趣味の本というところ。人文科学書などジャンルのはっきりした本は奥の壁際に高い棚があって、そこに入れられている。
趣味の本ゾーンは、学芸大学・流浪堂のようにジャンルがはっきり別れず、山の本とか格闘技の本といった感じにキーワードで分類されている感じ。さらに平台と背置きの組み合わせがわざとなのかちぐはぐになっている。たとえば帳場手前では、妖怪の本が平台、背置きがカメラの本だった。予想をしながら棚を見ていくことができないので、お初の訪問だとけっこうびっくりする。その隣にこの本があるのか、と。
感心したのはコンビニ廉価版のコミックスが大量にあったことだ。量を置くだけなら簡単だが、それがきちんと分類されている。たとえば時代コミックスは専用の棚になっていて、さいとうたかをとそれ以外が分けて置かれている。これだけでもかなり見やすいのである。ケン月影の棚なんてひさしぶりに見た。漫画ゴラク系とかグルメ系とか多いものは別にまとめて置かれているし、実話系と麻雀系が合わさった棚にも見ごたえがあった。
猫は音楽の棚に寝そべっていて、私が通るたびにぴくんと顔を上げてこっちを見る。安眠の邪魔をしてごめん。捜していた本が稀覯書の棚にあったのだが値段が折り合わず、買えなかった。代わりに紙の雑誌のDropkickが1,2、4号とあったので購入する。買ったと思うのだけど、手放した可能性がある。今はkamnogeの人気連載となっている玉袋筋太郎の変態座談会も、この雑誌に掲載されたことがあったのか。
店は15周年を迎え、16年目に突入したとか。今まで来なかったのがもったいなかった。またぜひ伺いたい名店である。
横須賀線直通の総武線快速が来たので乗車、千葉踏査行おしまい。