杉江松恋不善閑居 真山隼人、浪曲「じゃりン子チエ」に挑む~〈Rokyoku-Extend〉始動

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某月某日

昨日、浪曲師・真山隼人が、はるき悦巳原作『じゃりン子チエ』(双葉社)の浪曲化に挑むことが発表になった。11月24日に大阪・新世界、12月7日に東京でそれぞれ東西の初演がある。詳しくは上のチラシをご覧いただきたいが、12月7日の東京公演については私が窓口なので、予約や問い合わせなどはご連絡をいただければ幸いである。

『じゃりン子チエ』を浪曲にするというのは、その手があったか、という名案だった。隼人さんから聞いてすぐに動き、許諾の窓口を探し始めた。私がしたのはそこまでで、直接話を通したのは隼人さん自身である。それだけ熱意が認められたということで、原作者サイドをも動かした真山隼人の真摯な姿勢、そして熱演ぶりをどうぞその目でご確認いただきたい。

この公演を私は、〈Rokyoku-Extend〉と呼ぶプロジェクトの一環に位置付けている。「浪曲を拡張する」、つまり浪曲が演じられる場や、それが受容される機会を広げていくということだ。さまざまな大衆芸能と同じく、浪曲にも方向性を巡って複数の考え方がある。伝統的なものを守っていくのは大事だが、同時に時代に合わせて新しさも獲得していかなければならないということである。浪曲は明治期以降の成立だから、それより起源の古い講談や落語に比べてもその時々の現代性に順応しようという姿勢が強かった。言ってみれば、今演じられている演目のほとんどが元は新作だったのである。新作を作り続けていなければ浪曲は止まる。だが、つまり節と啖呵から成り、三味線と息を合わせて唸るという最大の美点を失ったものは、もはや浪曲とは呼べないのである。浪曲らしさをそのまま残した上で、場を拡げる。だから〈Rokyoku-Extend〉なのだ。

この名称には、私は素人なので浪曲の中身に口を出すことはできない、という思いも込められている。浪曲の台本を準備するところまでは手伝えても、それを最終的に作品に仕上げるのは浪曲師と曲師だ。作品はプロの手で、ただそれを置ける場を増やすのみである。

今回の浪曲『じゃりン子チエ』は隼人さん発案で、私は成立をお手伝いしただけだが、この先にも第二弾、第三弾の〈Rokyoku-Extend〉を準備している。ご期待ください。そしてまずは12月7日。ご予約必須なのでお早めに。

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