杉江松恋不善閑居 9/8〈スギエゴノミ〉木村勝千代・広沢菊春独演会

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某月某日

アートスペース兜座(中央区日本橋兜町11-10)での一日演芸会〈スギエゴノミ〉であった。事情により午前の部はお休み中なので、昼過ぎに会場入りする。気楽なものである。

昼の部は木村勝千代さん独演会を、いつも通り広沢美舟さん三味線で。予告ネタは原爆の哀しみと怒りを描いた「まっ黒なおべんとう」40分フルバージョンである。

品川あまから楼(清水一郎原作) 勝千代・美舟

トーク

まっ黒なおべんとう(児玉辰春原作) 勝千代・美舟

トークコーナーで、次回のネタが決まる。11月25日は勝千代さんの師匠である木村松太郎さんの命日である。それを記念して、故人の持ちネタから「宇都宮吊天井」となった。この外題、実は勝千代さんが小学校のときに松太郎さんに習ったもので、最近になってそのころの録音テープが出てきたとか。もしかすると会場で流するかもしれない。

「まっ黒なおべんとう」は児童文学版と、それを元にした絵本版があり、寄席サイズは後者だとか。今回は細部のディテールが加わったフルバージョンである。少年の理不尽な死に心が痛む。去りゆく夏を惜しみながら過去の愚行に思いを馳せる。この日にぴったりな一席だった。

18時からは広沢菊春独演会。もちろん三味線は広沢美舟さん。「菊春vs菊春」として、持ちネタの連続ものから2席をかけてもらい、どちらが聴きたくなったかをお客さんに投票していただいてそのあとは、という趣向の会である。だが菊春さんが三席を準備してきて、開口一番でも「投票の結果はもちろん参考にしますが、絶対やるというわけではない」と予防線を張る。演目は以下のとおり。

清水次郎長 名古屋のご難 菊春・美舟

祐天吉松 発端 菊春・美舟

国定忠治 髪結床 菊春・美舟

トーク

最後のトークコーナーに顔を出して、いろいろ話を窺う。投票の結果は、かなりの差をつけて国定忠治だった。この日のネタはすべて、二代目広沢虎造が関東節で唸っていた外題なのだが、ぜひ菊春オリジナルも交えて連続ものとしてやってもらいたい。ただいま次回の出演交渉中。こちらの目論見通り国定忠治連続読みとなるかどうかは未定だが、ぜひ次もご来場いただきたい。よろしくお願い申し上げます。

次回のスギエゴノミは変則的に10/26(土)となる。午前の部は1年前に年季明けして勉強会を巣立った東家千春さん・志乃ぶさんご両人の里帰り二人会、三味線は沢村理緒さん。午後の部はベテラン鳳舞衣子さんの独演会で三味線はこれもベテランの伊丹明さん。夜の部は浪曲ではなく、活動弁士・坂本頼光さんをお招きして活弁ライブである。どれも楽しい会になると思うので、ぜひご来場を。

また、11月23日(土祝)が通常の〈スギエゴノミ〉で、昼の部は上にも書いたとおり木村勝千代さん独演会で、曲師は広沢美舟さん。夜の部は、天中軒雲月門下の二番弟子・天中軒景友さん独演会である。曲師はこれも広沢美舟さん。景友さんとはひそかに相談している趣向があるので、チラシも二の線で作らせてもらった。どうぞお楽しみに。

このまま会が増えていくと〈スギエゴノミ〉は毎月開催になってしまう。楽しそうだけど、たいへんだろうなあ。

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