杉江松恋不善閑居 水戸・とらや書店

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某月某日

茨城行きの続き。

佐藤書店を出て駅まで戻る。ここから常磐線の上りに乗ってまた移動である。

常磐線というとつちうら古書倶楽部があるが、前回訪問してからあまり日が経っていないので、この日は予定していない。古本屋も育てないといけないのだ。

代わりに手前の水戸で降りる。ここに宿題店があるのだ。

水戸駅北口を出て、駅前のロータリーから道なりに北西へ歩く。十分もしないうちに大きな道路の右側に見えてくるのが、とらや書店である。茨城県最古の古書店であり、郷土資料の扱いでは右に出るもののない老舗だ。通信販売では何度も購入したことがあるが、実際に店舗を訪れるのは初めてである。

自動ドアを入ると細長い店内で、左側だけ戸口から進むことができ、右側はつぶしてあるので奥から折り返すしかない。左側が郷土資料の主ゾーンで、右側は社会科学などもう少し広く範囲をとって本が置いてある。奥には全集などさらに硬い本。水戸学関連についてはさすがの品揃えというべきで、当たり前のように『大日本史』の全集が置いてある。それはそうか。左側ゾーンの壁側は陳列棚になっていて、硯や筆など書家向けのものもある。こう書いてわかるように、柔らかい本はほとんどない、ガチガチの硬派だ。『旭町の今昔』の例があるので、油断せずに自費出版本なども丹念に探していく。いくつか関心をすれすれにかするものはあるのだが、ずばりのものはない。買おうと思えば買えるのだが、この店では逆に失礼になる気もするのだ。棚のラインアップを壊したくない。

というわけで文庫棚から秦恒平『京のわる口』(平凡社ライブラリー)を選ぶ。生粋の京都人が書いたエッセイで地元民だからこその悪口が楽しい。元祖「ケンミンSHOW」みたいなエッセイなのだ。旅行中とかに読むのに適しているので、鞄の中に入れておこう。

水戸駅から再び常磐線に。この日は、実は18時までに神保町に戻らなければならない理由があった。某社で座談会に出る約束だからである。それがなければ、どうしたかって。もちろんつちうら古書倶楽部に寄りましたとも。

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