実券でヨロシク1「やる前から負けること考えるバカいるかよ!」(アントニオ猪木)

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杉江松恋不善閑居の10/11付記事で書いたが、私は2010年頃に北尾トロさんが当時刊行していたミニコミ誌『レポ』に参加した。その『レポ』が〈ヒビレポ〉というメールマガジンのようなものを出すことになり、執筆陣に声がかかった。その折に、じゃあ杉江松恋というライターが今何を考えているかを書きます、といって全13回で連載を始めたのがこの「実券でヨロシク」である。たぶん2012年頃だと思う。原稿がごっそり出てきたので、一気に掲載してしまう。当時はそういうことを考えていたんだ、と懐かしく読んだ。参考になるかどうかわからないが、2010年代の話としてご覧いただければ幸いである。

画像はサークル〈腋巫女愛〉過去作表紙から(赤色バニラ・くまさん画)

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「実券でヨロシク!」

その1「やる前から負けること考えるバカいるかよ!」(アントニオ猪木)

実券というのはプロレス用語だ。他の世界でも使う言葉なのかもしれないが、私は知らない。お金を払って来てくれたお客さんのことを実券入場者と言うのである。え、そうじゃない人っているの? と言われるかもしれないが、いるのである。招待券入場者というやつだ。会場を埋めているお客さんが多ければ華やかでいいが、実券が少なければ収入にはつながらない。じゃあなんで招待券を出すのかといえば、会場がガラガラだとのちのちの評判に響くからだろう。はっきり言って見栄である。招待券ばかり出していると、その団体は傾いていく。

なんでこんな話を唐突に始めたかというと「果たして自分にはどのくらい実券でお客さんを入れられる力があるだろうか」ということが今とても気になっているからだ。言い換えれば「杉江松恋の名前でお金を出してくれる人がどのくらいいるか」ということである。

これは前にも書いたが、「週刊プロレス」全盛期の編集長だったターザン山本がレスラーの価値を「チケット人気」と「会場人気」に分けたことがある。前者は文字通り入場料にお金を払わせる(つまり実券)レスラー、後者はお金は払ってくれないものの会場ではどっとお客を沸かせるレスラーだ。会場人気しかないレスラーが勘違いして自分にチケット人気があると思いこむと団体の中で人間関係がおかしくなっていく、というのがターザンの原稿の趣旨だったと記憶している。それはいいとして、ここで考えないといけないのは杉江松恋というライターにあるのはチケット人気か会場人気かということである。さて、どっちだ。

昨年の春ぐらいから私はLive Wireというイベントでトークライブを始めた。ついにはとち狂って毎週火曜日に定期開催まで始めてしまった。これも自分にチケット人気があるかどうか確かめたかったからだ。結果、集客に苦戦している。チケット人気はなかったのだ。杉江松恋は会場人気のライターだったのである。うわーっ、知らなかった!(いや、うすうす感づいていたけど)苦戦するのは当たり前だ。それを見極めてから定期イベントも始めろって話である。

自分を知るのはいいことだ。よくわかったので私はトークイベントの数を増やすことにした(あれ?)。9月からは下北沢のカフェ本屋B&Bで「杉江VS米光のどっちが売れるか!?」というイベントを始めた。ゲームクリエイターの米光一成さんと3冊ずつ本を決めて観客にお薦めしあい、どっちの本が売れたかで勝負を決めるという対決ものである。さらに10月からは荻窪ベルベットサンというライブハウスで読書会を開く予定である。両方とも定期開催で、できれば月イチでやりたい。つまり月に6回イベントをやるってことだ。やれって言われたらもっとやったっていい。チケット人気がないって言っていたのに大丈夫か? いや大丈夫じゃないけどやるんだよ。ないはずのチケット人気を「ある」にするためにやるんだ。そのためにいろいろ秘策だって考えたんだよ! これからの活動を見ててくれよ!

――と、つまりこのメルレポ連載はそういう趣旨のものなのです。これから年末までの3ヶ月、どうぞおつきあいのほどを。そしておもしろそうだなと思ったらぜひイベントにも「実券で」お越しくださいね。

今回の「実券予定」(当時)※省略

(つづく)

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