〈落語もできる小説家〉は、かつて落語立川流真打、立川談四楼さんが、作家としてのデビュー作『シャレのち曇り』(PHP文芸文庫)を上梓したころに打ち出したキャッチフレーズでした。
芸人には余芸として他のことを手がける向きが少なくありません。小説もその余芸の一つに入ります。芸人小説家の肩書きがある方は多いですが、中でも談四楼さんは小説家としても実力派で読み応えのある作品をものしていらっしゃいます。
その多くは自分と同じ落語家を主人公にした芸人小説です。中でも短篇集『石油ポンプの女』(新潮文庫)や、同題の落語が出来上がるまでを自身の家族に対する追想と共に描いた『一回こっくり』(新潮社)は名作だと思うのですが、現在は手に取りづらくなっているのが残念でなりません。また、立川談志との関係を語った私小説『談志が死んだ』(新潮文庫)は、物怖じせずに師匠を語った類書の少ない一冊です。
その談四楼さんが、ひさしぶりに芸人小説を書かれました。題名は『七人の弟子』。真打に昇進した立川わんだを筆頭とする弟子たちについて語った私小説で、原稿を書き始めた段階では弟子が七人だったのに、後に弟子入りなどがあって数が変わってしまいました。
これまで自身の師匠について書かれた芸人小説はあっても、師匠の立場から弟子を語るものはほとんど存在しませんでした。弟子小説であると同時に、これが本当の師匠説なのかもしれません。
談四楼一門は他の協会、一門では無理な、年齢を重ねてからの入門者が多いことでも知られます。代表格が、それまで談四楼さんの担当編集者だったのに、一念発起して弟子入りした、二番弟子の立川寸志さんでしょうか。人呼んで落語会の中年再生工場。人生経験を積んでからの入門者には、初々しい十代のそれとはまた違う味があります。お弟子さんたちのそれぞれ違う肖像を楽しんでいただければと思います。そしてぜひご贔屓に。
書籍は12月初旬の発売となりますが、それに先立って落語会を催すことになりました。場所は浅草木馬亭です。普段は浪曲専門の寄席である木馬亭で、談四楼一門の落語をお楽しみください。当日は書店に先行して『七人の弟子』の販売も行います。
お申込みは末尾の連絡先まで、どうぞ。
日時:2024年11月26日(火)18時半開演(18時開場)
場所:浅草木馬亭(台東区浅草2-7-5 銀座線浅草駅より徒歩8分)
出演:立川談四楼、立川只四楼、立川半四楼
木戸銭:予約2500円・当日2800円
ご予約・お問合せ:担当杉江 sugiemckoy@nifty.com 09041265941