京阪紀行の二日目。前日は心斎橋大学の遠田潤子さんとの対談で夜を迎え、学校がとってくれたホテルで一泊した。心斎橋で目覚め、チェックアウトをして出発する。心斎橋駅から地下鉄御堂筋線でなんばへ。南海線へと乗り継ぐ。目指すのは大阪府の南端、泉佐野市である。
泉佐野駅で降りて海側へ向けて歩いていくと、数分で大きな道にぶつかる。それを渡る前から見えているのが、絶版まんが専門店オケフサだ。
オケフサのことは、google mapで検索をしているときに発見した。泉佐野市に古本屋がある、しかもまんが専門店である、ということでちょっと意外な気持ちがした。失礼ながら、そういうサブカルチャーのイメージがまったく無かったからだ。
信号を渡り、看板を見て驚いた。「古本 絶版まんが専門店オケフサ」という文字の下に「桶房提灯店」と書かれていたからだ。え、提灯屋なの。
とにもかくにも中に入る。左右の壁に棚、中央に二列の両面棚という構成になっていて、正面が帳場だ。その帳場にはなるほど、各種の提灯が吊り下げられている。カウンターには古いカードなどグッズ類を入れた展示ケースがあった。
右側の壁は青年向けが多く、芳文社の麻雀劇画などもある。中央右と左のゾーンは基本的には出版社のレーベル別に並べられているが、手塚治虫、赤塚不二夫など有名作家はそれだけで棚が設けられている。特に永井豪が充実していると感じた。『まろ』三巻セットを見たが、高くもなく安くもなく手頃な値段だ。プロレス漫画としてはお下劣路線の最北端ともいえる表題作の短篇集『ビバ! 女子プロレス』など、単発作品もかなり揃っている。
入口を入って左のあたりは展示ケースで、少年誌のバックナンバーなどが陳列されている。『うる星やつら』最終回が掲載された『週刊少年サンデー』を見つけて、気持ちがなごむ。それ、連載時に買いました。左側の壁はムックなどアニメ関連や、ジャガーバックス、ドラゴンブックスなど稀覯本となっている児童書もあるゾーン。ここで『マイアニメ』の付録らしいアニメルパン特集の小冊子を発見した。『ルパン8世』関連の記述があるらしく、これは買うしかない。持っているかもしれないが買うしかない。
帳場に行って清算をお願いしながら、店主といろいろお話した。やはり本業は提灯屋で、代々続いたお店なのだという。ただし提灯の需要も減ってきて、祭りのある夏以外は暇になる。そこで店主が幼少期から好きだった漫画の古本屋を10年前から始められたのだとか。御多分に漏れず子供のころに買った漫画は手放してしまい、30年かけて買い直した。その一部も店には出ているらしい。お互いの探求書のことなど、いろいろ情報交換する。最近探しているのはカゴ直利なのだが、それはあまり見たことがないとのお返事だった。
話している間に気が付いたのだが、ご主人はえのきどいちろうさんにそっくりなのではないだろうか。なんとなく声も似ているような気がしてきた。えのきどさんと話しているとしか思えなくなってきて混乱した。双葉社100てんコミックスについて熱く語るえのきどさんを見たい人は泉佐野へどうぞ。
お店を出て南海の駅へと向かう。よし、次。(つづく)