杉江松恋不善閑居 大利根勝子さんのテーブル掛けと三俣・山猫館書房

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某月某日

朝いちばんで通っている総合病院に行き、6週間に一度の定期検診を受ける。結果はまあまあ。そこからバスでJRの駅を目指し、北上する列車に乗った。大宮駅で乗り換え、一駅だけ新幹線ときで高崎まで。いつもだったら新幹線なんて乘らずに在来線で行くのだが、定期検診があったことをうっかり忘れて予定を組んでしまったので、急いでいるのだ。

高崎から両毛線に。Twitterを見て、神保喜利彦氏の群馬県文学賞受賞式がこの日であることを知る。連絡してお祝いを言う。『東京漫才全史』(筑摩書房)は画期的な名著だからこれは当然だ。よく考えてみたら私は生まれてこのかた、賞と言われるようなものをもらったことがないので、もう物書きとしては抜かれているのである。神保さん、頑張れ。次著も期待しています。編集者の人は紹介するからどんどん神保さんに仕事を依頼したほうがいいよ。

前橋で降りて、とりあえずバスに乗って中央前橋駅へ。いつも思うがこの駅の看板は本当に立派だ。立派すぎて異国情緒すら漂っている。二つ目の三俣で降りて、ちょっとだけ山猫館書房に寄った。詩集や文学書が充実した素敵な古本屋である。大藪春彦『GUN教室』を買う。「マンハント」連載が元になったものだと思う。持っているはずだがちょっと自信がないので、この値段なら買いである。そこから戻って、大利根勝子さんのお宅を訪問した。

前に書いたことはあっただろうか。もしかするとなかったかもしれないが、今定期的に大利根勝子さんを訪問して、昔のお話を聞かせてもらっている。少女時代から70年以上も浪曲師であり続けた方のお話は実に魅力的だ。この日は話のはずみで、勝子さんが一関の大利根太郎師に弟子入りした際に作ってもらったというテーブル掛けを見せてもらった。生地は勝子さんに浪曲師になることを薦めたおじいさんが買ってくれて、知り合いが字と絵を描いてくれたのだという。近くで見るとわかるが、刺繍ではなくて書いたものである。

あれこれ話しているうちに夕方になり、上毛電鉄で中央前橋へ。いい話を聞けたなあ、と感慨に耽りながら帰った。

この日は原稿を途中までしか書けていないのだが、単発仕事の依頼を二つ頂いたので勤務評定は2.0である。いつも書くように、単発仕事の依頼をいただくと世界から生きていていいと言われたような気持ちになる。ありがとう。

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