杉江松恋不善閑居 共感よりも分析を提供する書評家でありたい

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某月某日

またも一日籠って仕事読書のつもりだったが、五反田遊古会と和洋会古書展の初日だったことに気づく。目録を送ってもらっている都合上、あまりご無沙汰するのもよくない。来ない客だと思われると目録送付が止められてしまうのである。なので、午後遅くになってから二会場をまわるために外出した。

まずは五反田遊古会へ。ここは五反田駅から数分の南部古書会館での開催である。二階が本会場で、一回は格安の放出品が出されている。ここが実は掘り出し物の宝庫なのである。本会場に古い映画館チラシが出ていた。単体の作品ではなくて、二色刷りで公開予定が書かれているやつだ。その中に民謡大会のものが混じっており、浪曲師の出演についても書かれていた。これは浪曲資料だから買いである。

そこから都営線で浅草線と三田線を乗り継いで神保町へ。てくてく歩いて東京古書会館に向かう。地下が会場だ。和洋会は掛け軸からアメコミまで幅広いものが陳列されるので、おもちゃ箱のような雰囲気がある。ここで中央公論社の『スーパーマンの最期』を購入した。題名通りの内容で、アメコミの翻訳作品なのだが、監修としてモンキー・パンチがクレジットされている。どの程度関わっているかはよくわからない。中央公論社から愛蔵版の『ルパン三世』が出ていたと記憶しているが、おそらくはその絡みで実現したものではないだろうか。アメコミには関心が薄いが、これはモンキー・パンチ案件なので必要なのである。

二会場で二商品を買い、東京堂書店をひやかしてぶらぶらと帰る。

今見たら、杉江松恋チャンネル「ほんとなぞ」の登録が1900人になっていた。昨年暮れが確か1600人ちょいだったから、300人増えたことになる。一日一人か。一万人に到達するためにはあと八千日かかる計算である。それはどうなのか。

よく、あんなにたくさん動画を更新して大変じゃないですか、と聞かれるのだが、基本的には録ったものをそのまま出しているようなものなので、それほどの作業量ではない。だから再生数も登録者数も伸びないわけで、本当にインフルエンサー的なチャンネルにしたいのであれば、もっと撮影も編集も質を上げなければならないのである。それはわかっているが、かける時間もお金もないので、とりあえず今のまま行こうと思っている。

どなたかに「おじさんがだらだら喋っているだけなのに妙におもしろい」と言ってもらったことがあった。文藝春秋編集者の永嶋俊一郎氏とやっている「modern crime club 現代の犯罪小説」では「これはミス研の読書会をそのまま見せているようなもの」という言い方をしたことがあると思うが、まったくその通りで、ああいうことを18歳の時からずっとやっていたのだ。それを見せているだけである。

ただ、単なる本好きの話ではなく、きちんとした書評になるように気を付けてはいる。内容紹介をわかりやすくすること、どういう作品なのかの構造分析が伴っていること、どういう人にその本が向いているかを示して購買につなげることが重要だ。単純にインパクトを与えるだけであれば、どう凄かったかを考察するよりも、どれだけ自分の心が動いたかを感情的な言葉で伝えたほうがいい。しかしそれは自分の仕事ではないと思っているのである。視聴者に共感させて購買行動に誘うことが上手な方は他にいらっしゃる。そういう方にはかなわないし、柄でもないだろう。

感情よりも分析を売る。そういう書評家だと私は自認している。パズルの最後のピースが嵌まったときに、込み上げてくる嬉しさというものがある。それを提供するのが仕事だろうと。文章ではなくて動画でやっているものも、同じことになると思う。どうしても長尺の動画になってしまうが、ご容赦いただければ幸いである。杉江松恋チャンネル「ほんとなぞ」は2025年も淡々と進んでいく。

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