杉江松恋不善閑居 腹が減っているときに大事な話をするものではない

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某月某日

火曜日は東京新聞に行き、豊崎由美さんと恒例の年末回顧対談で語り合った。豊崎さんとは主たる専門分野が異なるので、お話しするといつも触発されるものがある。終了後は記者のみなさんと新橋で打ち上げの楽しいひととき。毎年この仕事は楽しみにしている。また来年もお声がかかるといいな。たぶん中旬くらいに記事は更新されるはずだ。

水曜日は午前中から予定が入り都内を飛び回った。まず品川区で取材が一本あり、それが終わってすぐに豊島区の某所まで移動して「modern crime club 現代の犯罪小説」の収録、ここから1時間ほど空くので遅めの昼食、のつもりだったのだが来年編著を出す予定の某社から緊急の打ち合わせを今週中にしたいから時間を作ってもらいたい、との連絡が。いや、無理、絶対無理、だって仕事がぱんぱんに詰まっていて無理、それをやるのは私に死ねということだから無理、と頑強に断っていたのだが、よく考えたらこの時間帯に入れることはできる。なので次の予定である光文社近く、護国寺駅まで来てもらうことを条件に打ち合わせを承諾した。つまり昼食抜き。仕方ないが体に悪い。

打ち合わせは、まあそういうことはあるだろうけど私に言われてもなあ、というたぐいのもので、編集者と首をひねりながら、現実的な解を選ぶしかないよね、という結論に達した。打ち合わせをしなくても答えは見えていたと思うのだが、きちんと著者の同意を得ることが大事だ、という判断だったのだろう。以前、こちらにまったく断わりなく著書の題名を変えられ、刊行間際になって知らされたということもあった。ひどい対応だと思ったが、もうどうすることもできなかった。それに比べればだいぶましである。相談してくれるだけいい。腹は減ったが。

そのまま光文社へ。円堂都志昭さんに『日本の犯罪小説』についてインタビューしていただくことになっていたのである。事前に質問を送っていただいていたので、なんとかなった。『日本の犯罪小説』について話すのは千街晶之さんとの対談もあって二回目なのだが、おなかが空いていたこともあってちょっとぼんやりした受け答えになってしまったかもしれない。円堂さんがきっと、頭のいい感じに文章の力でなんとかしてくれるだろう。ぼんやりしていたせいで、インタビューの後は撮影があるということも忘れてうっかり片付けて帰りそうになった。だいたい空腹が悪い。「犯罪小説なのでちょっと悪目に」みたいな注文があったのでなんとなくふてぶてしい顔をしてみせたが「私、PTA会長もやっていたんですけど」と言ったら笑いが起きた。おなかが空いていたので悪い顔というよりひもじい顔に写っていたのではないかと思う。

おなかが空いたまま帰宅。夕食をとったら急に疲れが出て、何もせずに寝てしまった。

教訓。編集者から火急の連絡が入っても、食事を優先すべし。

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