杉江松恋不善閑居 東武古書の市&宇都宮・igno….book plus

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某月某日

備忘のための日記続き。

今週の日曜日、年内最後の日曜日に思い立って宇都宮まで行った。

なぜ宇都宮なのかと言えば、年末年始に東武百貨店で東武古書の市&中古レコード販売会が行われるからだ。本当はクリスマスの25日からだったのだが、諸般の事情で家から出られなかったので四日遅れとなった。

出発が遅れてしまったので、もったいないと思ったが大宮駅から一区間だけ新幹線に乗った。これが大混雑である。そうか年末の帰郷ラッシュに当たってしまったか、と後悔したがもうどうしようもない。自由席の1~3号車は朝の通勤電車状態である。デッキにも入れないのでは、と思ったが放送があり、4~5号車に回れとのこと。走って乗車し、そこそこの混雑の中を約20分、宇都宮駅に着いた。

そこから東武百貨店まではバスで行く。古本まつりに入る前に、オリオン通りにある焼きそばの名店・安藤に立ち寄った。具はキャベツだけ、太麺で紅生姜も青海苔もつかない単純極まりない焼きそばである。これで大盛り300円。

東武百貨店の8階催事場がいつもの通りの会場だった。栃木市の吉本書店がとにかくたくさん紙ものや古い資料を出していて、毎回それを楽しみに来る。かぴばら堂の鉄道切符などの小物も魅力的だ。本よりもトレイに置かれている刷り物に関心が向くが、ほらあった、昭和23年版の東西浪曲技藝士名鑑、いわゆる番付である。昭和23年版は持っている気もしたが、ここで買い逃したら後で絶対後悔する。迷わず買いである。今日はこの番付に呼ばれて宇都宮まで来たのだ。

東武百貨店を出ててくてくと東に向かう。いつも通り秀峰堂を見に行くが、いつも通り開いていなかった。もう店舗営業はしていないのだと思う。ここ10年ぐらい開いているところを見たことがない。すぐ近くのanalog booksも開いていなかった。めぐり合わせが悪いのか、ここにも入れたことがない。仕方なく、近所の川沿いにあるigno…book plusへ。ここが2024年最後に入った古本屋になった。

東武百貨店で開催されるものが関東で最後に残ったデパートの古本まつりだ、と書いたらTwitterで、吉祥寺PARCOのそれも該当するのではないか、というご意見をいただいた。優位な差はないと思うのだが、私は少し違うような気がしている。私の考える百貨店の古本まつりは、目録が存在するものだからだ。かなり前から目録が発行され、それを手にした者たちが古本欲を煽られて当日会場にやってくる。前にも書いたかもしれないが、かつては古本まつりの日になると、百貨店の特定の入り口に待機して開店を待つ集団というものがあった。古本まつりはだいたい最上階に近い催事場で行われた。そこに辿り着く最短経路というものをそれぞれが熟知していたのである。この、上階の催事場で行われる、というのも私の考えるデパート古本まつりの条件である。これを満たすものはやはり東武百貨店宇都宮店にしかないように思うのだ。かつての古本まつりを懐かしく思う人はぜひ宇都宮に年末年始足を伸ばしてもらいたい。

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