浪曲木馬亭三月定席の二日目に顔を出す。浪曲親友協会の春野恵子が、師匠である春野百合子の十八番「樽屋おせん」をかけるというので、楽しみにしていた。トリは澤順子で山本周五郎『日本婦道記』から「糸車」。けっこうな舞台でした。
終演後、つくばエクスプレスに乗って北千住へ。ここに昨年の暮れ、ainwick booksという新しい古本屋ができたのだ。西口に出て南に曲がり、呑み屋が並ぶ長い路地を抜けると踏切から続く交差点に出る。それを渡った先の、旧日光街道沿いだ。
店に近づいていくと、建物の方を向かって立っている女性が見えた。あれは間違いなく、店頭の均一棚を眺めている人の姿勢である。前まで来ると、はい、当たった。前面がガラス張りで、中が一部見える。左側が帳場であるらしく、そこに面したところには本が表紙を向けて陳列してあった。自転車に乗った女性が「きのこの本があった。気になる」と言いながら通り過ぎていく。
中に入る。ちょうど回の字型になっていて、真ん中のテーブルにはさまざまなブックガイド本が並べてあった。そういう風に特集を組むのだろう。自著もあって、ちょっと気恥しい思いをする。入って右側が、手前から漫画・児童文学・日本作家となって、文庫棚に変わる。正面の棚は海外文学強めで、帳場の前にある左の棚はzineや版型大き目の本が主だ。マンガのコーナーに内田善美の短篇集がある。値付けはそれほど高めではないので、これは買いだろう。児童書のコーナーにも気になるものがあったが、ダブりなので止めておいた。500円なので安いのだけど、版型が大きかったのである。早くも常連のお客さんがついたらしく、Googleにいつの間にか店が登録されていた、という話をしていた。
急いで木馬亭に戻る。真山隼人ツキイチ独演会である。この日は山崎徹さんがゲストで、「勧進帳」につけを打つ特別な口演が行われる予定なのだ。真山隼人芸歴15周年でもあり、沢村さくら25周年でもある。つけ入りの「勧進帳」は普段にも増して迫力があり、堪能した。真山隼人の舞台はこの前日も聴いているのだが、それはまた別途。