過日、土日月で大阪に行ってきた。主たる要件は、真山隼人十五周年記念の会を聴くためなのだが、ちょうど一心寺門前浪曲寄席の月例定席であったので、そちらも顔を出す。何しろ、しばらくこの会をお休みしていた菊池まどかが復帰、九州から五月一秀が出演、天中軒かおりが初出演で、トリは師匠の五代目雲月というのだから行って損のない会であった。
午前中に移動して大阪入り。一心寺は午後1時始まりなのでまだ時間がある。JRを乗り継いで環状線の天満へと向かった。ここから天神橋筋を南下して古本屋をいくつか訪ねるのである。
まず足を向けたのが商店街から一本入ったところにある書苑よしむらである。ビルの2階にあり、美術書専門ということでなかなか訪問の機会がなかった。古い階段を上っていくと店主らしい男性がいて、ちょうど中に入るところだった。開いてますか、と聞くと、うちは美術書専門ですがいいですか、との答えが。ふりで飛び込んで、何も買わずに帰る人も多いのだろう。もちろんです、と返答して入れてもらう。
中はなるほど、古本屋というよりは美術商の事務所といった風情で、真ん中にローテーブルとソファーが置いてあり、その周囲に本の山、さらに壁際に書棚という並びだった。用もないのに入ってきてうろうろされては、これは困るだろう。
美術書はいくらでも買えるので別にいいのだが、できれば少しでも関心の強いものを買いたい。そう思って探していたら、おもしろいものを発見した。市道和豊『与汰雑誌「グロテスク」』(室町書房)、カストリ雑誌グロテスクの研究書でB5版、おそらく自費出版だろうという体裁をしている。しかもシリーズになっているらしく、何冊もナンバリングされた本が並んでいた。どうやら西の本であるらしい。いちばん濃そうなところを選んで帳場で精算してもらう。おもしろかったら、また書苑よしむらに来たときに買えばいいのである。よしよし、と思って外に出た。(つづく)