杉江松恋不善閑居 天神橋筋・フォルモサ書院と一心寺門前浪曲寄席三月定席初日

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某月某日

書苑よしむらを出て天神橋筋商店街に戻る。すぐにあるのが栞書房で、入口付近は雑誌のバックナンバーや絵本、写真集など大型本が並ぶ棚だが、奥に入ると芸能関係などのサブカルチャー、マンガなどの結構珍しい本がある。しばらくご無沙汰していたので何か買おうかと思って見ていると、小松左京『日本沈没』のカッパノベルスが目に入った。ちょうど22日にマライ・メントラインさんと対談する予定の、課題書である。せっかくならカッパノベルスで持って行こうと思い、購入する。そこを出るといつも店頭に人が集まっている天牛書店と矢野書房がある。捜しているちくま学芸文庫があるので丹念に棚を見た。天牛書店で帳場の店員が、民俗学の本が溜まってきたからセールをやろうか、という相談をしていて、それなら来たときに当たってくれればいいのに、などと思う。

芸能関連専門の杉本梁光堂は開いておらず。しかしがっかりはしない。今回ここに来たのは、未訪店のフォルモサ書院が目当てだからだ。名前でわかるように台湾関連の本が専門だというが、これまでタイミングが悪くて一度も入れたことがない。商店街に面した入口のところに、本を積んだワゴンのような看板が出ていた。これが営業中のしるしなのである。やっている。

ビルに入ると正面が介護ステーションで、その横に階段があった。ずいぶん古いビルで二階に上がるとノブのついた扉が並んでいる。そのうちの一つがフォルモサ書院だった。

中に入ると正方形に近い店であることがわかる。入って左から正面にかけては台湾を中心にした東アジア関連の本が中心で、見たこともない本がたくさんある。日本のものだけではなく台湾や大陸で出版されたものも並んでいるのだ。中央にZINEなどを並べたテーブルがあり、入口の手前側から右にかけては文学書や人文科学書が中心だ。新しいものも織り交ぜて、結構な数がある。坪数は小さいかもしれないが、結構な密度だ。

ここならあるのではないか、と思って見ていたらやはりあった。初期石原慎太郎だ。青春小説の『野蛮人のネクタイ』『野蛮人の大学』集英社文庫版。これは結構珍しい。そして新潮社から出た短篇集『狂った果実』の単行本があった。ああ、これでもう十分である。

お勘定をしてもらい、店を出る。南森町の駅から堺筋線に乗り、天王寺へ。ここから一心寺までは歩いて十分程度だ。ぎりぎり開演に間に合う。お目当ての多い浪曲会で菊池まどか「温かい手」と五月一秀「高瀬舟」(森鴎外)は初めて生で聴いた。五月一秀の文芸浪曲路線はもっと聴いておきたい。トリは天中軒雲月で「佐倉義民伝」。安定の素晴らしさであった。

終演後は有志で動物園前にて打ち上げ。早くから飲んだので酔ってしまい、六時半にチェックインしてホテルでそのまま就寝した。朝が早かったからこれでいいのだ。大阪一日目終了。

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