杉江松恋不善閑居 自分の内なる声を聞く必要があること

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某月某日

三月も早いもので三分の二が過ぎた。

夜中にふと目が覚めたので書いている。今月ここまで稼いだ額は目標に対して80.42%に留まっている。三分の一を残していいペースのように見えるが、実は呆れるほど日銭原稿を書けていない。単行本『名探偵と学ぶミステリ』の入稿前作業があったのと、確定申告を終わらせなければならなかったので進まなかったのである。それでも単価の大きな仕事があったので帳尻合わせができた。それがなかったら恐ろしいことになっていたと思う。

このあとのノルマは以下の通り。

【レギュラー】書評:週刊3、月2回刊1、月刊1。

【イレギュラー】書評2、コラム1、

【その他】講師1、対談・鼎談1、動画収録1、演芸会主催3。

なんとかこれらをすべてこなせば目標額は達成できる、ような気がする。実はこれ以外に、原稿料の二次利用などに関する問い合わせがぽつぽつ来ているので、それらを合計すれば穴埋めができるはずなのである。原稿の二次利用とは、帯の推薦文やポップに使ったり、紙の媒体に書いたものをwebに転載したり、というやつだが、かなり安いものでも基本的には断らないようにしている。自分の書いた原稿が人の目に触れる機会が増えるのはありがたいものだ。

推薦文用に一部を抜かれるとき、以前は自分が狙って書いたところではなくて、どうでもいい箇所を言われて、そこじゃないんだけどな、と思うことが多かった。最近はたいてい、あ、そこを抜くだろうな、というところを言ってこられる。たぶん私の習熟度が上がったのだと思う。機能一辺倒ではなくて、情感のほうに目が向くようになったというか。いいことである。

ただし、この先には俗情との結託というやつが待っていて、世間様の顔色を窺うような書き手になったら本末転倒もいいところだ。そこはうまくやらねばならないのであって、ますます孤独に自分の心を見つめていく必要がある。他人の声を聞きつつも、それから耳を守って自分の声が響くようにしなければならない。これがいちばん難しい。

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