書評 一覧

小説の問題vol.51 「わがままな私がおもしろい」内田百閒『百鬼園随筆』『続百鬼園随筆』・逢坂剛『アリゾナ無宿』

※百閒の名前が正しく表示されない場合、二字目は門に月である。 「浅草キッドのコラムを読むためだけのために『週刊アサヒ芸能』を買っている」とは作家にして名コラムニストの小林信彦の言だが、その浅草キッドの東京スポーツ連載コラム「捨て看板ニュース」が『発掘!』(ロッキン・オン)として刊行された。何しろ新聞連載に加筆収載したものだから情報量が多...

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小説の問題vol.50「ブームの中へ/中で/そして外へ」 大槻ケンヂ『リンダリンダラバーソール』・稲見一良『花見川のハック』

小説の問題vol.50「ブームの中へ/中で/そして外へ」 大槻ケンヂ『リンダリンダラバーソール』・稲見一良『花見川のハック』

『非在』(角川書店)というミステリーを読んだ。横溝正史ミステリー大賞優秀賞作家鳥飼否宇の長篇第二作だ。なかなかいい小説だが、中にこんなくだりがあって驚いた。ある人物が湯船で死体となって発見されるが、それを聞いた男が、 「江戸アケミのごとね」 と言うのだ。おいおい、「じゃがたら」のボーカリストだった江戸が風呂で頓死したことなんか、今の読者の...

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小説の問題VOL.49 「我らの内なるかえるくんとみみずくん」津原泰水『少年トレチア』 ・村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』

小説の問題VOL.49 「我らの内なるかえるくんとみみずくん」津原泰水『少年トレチア』 ・村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』

『神の子どもたちはみな踊る』は、一九九五年一月に起きた阪神淡路大震災をモティーフにした連作短篇集である。原型は「新潮」一九九九年八月号から十二月号まで連載された連作『地震のあとで』五篇。それに書き下ろし「蜂蜜パイ」を加えたものが、二〇〇〇年二月に刊行された本書の親本である。 本書に収められた六つの短篇に共通することは、小説に描かれる時間が、阪神...

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小説の問題vol.47「おそるべき無駄、無駄、無だ」殊能将之『鏡の中は日曜日』/ 旧:土屋賢二『哲学者かく笑えり』

小説の問題vol.47「おそるべき無駄、無駄、無だ」殊能将之『鏡の中は日曜日』/ 旧:土屋賢二『哲学者かく笑えり』

先日、『森博嗣のミステリィ工作室』(講談社文庫)という本に解説を寄稿したところ、森氏に後書きで献辞を頂いた。 しかしその献辞が気になる。 本書の前半部でご協力を得た杉江松恋氏からは今回の文庫化にあたって新しい文章をいただいた。底力を感じさせる人である。重ねて感謝したい。 「底力を感じさせる」。なんかいい響きの褒め言葉だ。手放しの賛辞...

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小説の問題vol.46「戦争と妖怪の馬鹿」 徳川夢声『夢声戦争日記抄』・京極夏彦『今昔続百鬼』

小説の問題vol.46「戦争と妖怪の馬鹿」 徳川夢声『夢声戦争日記抄』・京極夏彦『今昔続百鬼』

※またもや1号分逸失していた。一応お断りを。 この号がお手元に届くときには、もう新年である。今年もよろしくお願い申し上げます。 さて、二〇〇二年を迎えるにあたり、密かに期したことがある。それは日記をつけようということだ。文章で糊口を凌いでいる者として恥ずかしいが、日記に関して、私はこれまで三日坊主の域を脱したことがない。必ず四日目...

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小説の問題vol.44 「責任者出てこォい!」有栖川有栖『作家小説』・萱野葵『ダンボールハウスガール』

小説の問題vol.44 「責任者出てこォい!」有栖川有栖『作家小説』・萱野葵『ダンボールハウスガール』

小説の効用は人を快適にさせることだけではない。人間の感情に喜怒哀楽がある以上、時には「怒」のために書かれた小説があるのは当たり前のことである。わが国ではどうも「哀」の小説の人気が高く、その次に「喜」の小説が受けるらしい。泣かせたり、ほのぼのさせたり、というやつだ。いちばん人気が無いのは「怒」の小説である。 それはそうでしょう。わざわざお...

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小説の問題vol.43「食欲の秋にモテモテ」 東海林さだお『昼メシのまるかじり』・芦辺拓『十三番目の陪審員』

小説の問題vol.43「食欲の秋にモテモテ」 東海林さだお『昼メシのまるかじり』・芦辺拓『十三番目の陪審員』

「問題小説」連載のバックナンバーを再掲しているのだが、2001年4~9月号の原稿ファイルが見当たらないことに気づいた。半年分だから結構な期間である。どうしたのだろう。2001年9月に父が亡くなっているので、もしかするとそのどたばたが原因かもしれない。欠けている分は、いずれまたファイルが見つかったら補完しようと思う。悪しからずご了解ください。 =====...

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小説の問題vol.1 梁石日『血と骨』

小説の問題vol.1 梁石日『血と骨』

杉江松恋、お蔵出しシリーズの第三段は、誌名が変わり「読楽」になったかつての中間小説誌「問題小説」に十年以上連載していた書評を再掲していきたいと思う。確認したら、第一回はなんと1998年だから20年以上も前だった。今読み返すと稚拙で恥ずかしい部分もある文章だが、推敲は最小限に留めてお出しする。ああ、へたくそな書評だなあ。 98年はのっけか...

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幽の書評VOL.30(終) ジョージ・ソーンダーズ『リンカーンとさまよえる霊魂たち』、ヘレン・マクロイ『牧神の影』、ミック・ジャクソン『こうしてイギリスから熊がいなくなりました』

幽の書評VOL.30(終) ジョージ・ソーンダーズ『リンカーンとさまよえる霊魂たち』、ヘレン・マクロイ『牧神の影』、ミック・ジャクソン『こうしてイギリスから熊がいなくなりました』

死者の声なき声が生者を包みこみ、心を揺り動かす 南北戦争のさなかである一八六二年二月、エイブラハム・リンカーンは最愛の息子ウィリーを喪った。わずか十一年でこの世を去った長男の思い出に浸るため、大統領は納骨堂を訪れる。彼は気づかなかったが、その様子を見つめる者たちがいた。ウィリーの先住者、肉体は失ったものの地上から去ることのできない、幽霊たちであ...

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幽の書評VOL.29 ジェームズ・ロバートソン『ギデオン・マック師の数奇な生涯』、ディーノ・ブッツァーティ『魔法にかかった男』、エドワード・ケアリー『肺都』

幽の書評VOL.29 ジェームズ・ロバートソン『ギデオン・マック師の数奇な生涯』、ディーノ・ブッツァーティ『魔法にかかった男』、エドワード・ケアリー『肺都』

現実と幻想の境界線を容易に飛び越える 不審死した牧師が生の最後にしたためた長大な遺書が刊行され、その出版に至った経緯が序文として付された。ジェームズ・ロバートソン『ギデオン・マック牧師の数奇な生涯』は、そんな手記文学の定型を持った小説である。序文で「数奇な生涯」なるもののあらましが語られる。くだんの牧師は〈黒の顎門〉として知られる渓谷で滝壺に落...

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