杉江松恋
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街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2016年10月東海道再訪その3 平塚宿~箱根湯本駅
前回までのあらすじ。 ラーメン二郎、光書房、冨士見湯というあまりにも強力な三連攻撃のためにいったんは挫折した杉江松恋であったが、藤沢~平塚間を改めて歩き、なんとか元通りの工程に戻すことに成功したのであった。 二〇一一年の初歩きよりは自分の足が進化したことを証明すべく再び始めた東海道行、二回目にして早くも「限界まで長く歩く」という当初の目的...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2018年10月・東銀座で歌舞伎そば
東銀座は思い出深い町である。マガジンハウスがあるからだ。駆け出しのころ、書評の先輩である吉野仁さんや香山二三郎さんに声をかけていただき、対談などをよくやった。文芸誌「鳩よ!」や総合情報誌の「ダ・カーポ」など、なくなってしまった媒体でお世話になったものである。 今は知らないのだが、マガジンハウスには各誌に専属のライターがいた。社員ではなくて契約記...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2016 年7月東海道再訪その2・保土ヶ谷宿~藤沢宿
大学で美術史専攻だった友人がアンコールワットに短期間の発掘調査に行くことになった。もう二十年ぐらい昔の話である。 聞けば、直接カンボジアに入るのではなく、いったんタイのバンコクで準備を整えてからカンボジアに出発するのだという。 その報告を聞きがてら会って、飲んだ。 「探検隊、パッポンで全滅」 「それは何かね」 「手向けの...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2018年9月東海道線で浜松、静岡、沼津
豊橋泊の一夜は特に書くこともないので割愛する。駅前の精文館書店は立派でいいなと思った、ということぐらい。地方に行って地元の大型書店が元気よく営業しているのを見ると、本当にほっとする。残念ながら郷土本でそれほど欲しいものがなかったので何も買えなかったのだけど。 翌月曜は普通の平日で特に差し迫った仕事はなかったので、ゆっくり東海道線に乗って帰ること...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2018年9月青春18きっぷで飯田線、豊橋
首を伸ばして背もたれ越しに見ると、前のボックスで小学生が眠っていた。口が半開きである。窓ガラスに顔を押しつけいたまま下にずり落ちたらしく、「へ」の字というよりは「~」の字形に口がねじ曲がっている。寝違えてしまうのではないか、と思うほどに首が延びているのに、目を覚ましそうな気配はまるでない。 お連れさんは、と見ると興奮した面持ちで車内を駆け回って...
街てくてく~古本と銭湯、ときどきビール 2018年5月三浦半島で思いがけず古本屋
思い出したので書くが、今年のゴールデンウィークに三浦半島の城ヶ島に行ってきたのだった。城ヶ島といえば反射的に「仮面ライダー」と返してしまう昭和世代である。あ、「らき☆すた」のエンディング撮影で白石みのる氏も訪れていたか。「恋のミノル伝説」もあそこか。それは現地に来てから思い出したのだが、別に聖地巡礼が目的ではなく、三崎港にマグロを食いに行ったのであっ...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2018年9月、代々木公園のリズム&ブックス
山手通りを池尻のジャンクション付近から北上していると、途中にいつも機動隊の装甲車が停まっていて、立番のいる曲がり角がある。やけにものものしいので最初に見たときは、立てこもりでも起きたのかと思ったほどだ。 そのうちに安倍首相の私邸がその角を曲がったところにあるのだということをなんとなく知った。なるほど。だから警官がいるのか。その先を曲がったところ...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2018年8月、吾妻線と両毛線やっぱり焼きそば
二〇一八年夏の青春18きっぷ旅行のその2。 とにかく関東近郊で大回りできる道筋というのを考えて、高崎~小山の両毛線を軸にしようと考えた。この時点で両毛線は、特撮の撮影でお馴染みの岩舟まで行ったことがあるだけで、全線通しでは乗っていなかったからだ。 ただ、それだけではもったいないので、高崎から盲腸線の吾妻線にも乗ることにした。吾妻線には草津...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2018年9月北沢川緑道で豪徳寺、そして三軒茶屋
北沢川緑道を歩いてみた。 桜の名所としても知られる目黒川は、最近では桜の名所としても知られる。世田谷区を流れる北沢川と烏山川が合流したものが目黒川である。 東急田園都市線の池尻大橋駅から上流は暗渠化されていて、その上は緑道として開放されている。道沿いには下水を再利用した小川が流れており、知らなければかつての河川がそのままに保存されているのかと勘違...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2018年8月青春18きっぷ旅行・身延線と沼津の思い出
2018年夏の青春18きっぷのテーマは「大回り」であった。 大回り。 つまりここからあそこへまっすぐ行くのではなく、ぐるっと回って路線を乗り継いで、帰ってきたい。体内の乗り鉄成分がなぜか増加し、ひさしぶりに鉄道旅行に駆り立てられることになった。夏休み中の大学二年生に聞くと、行ってもいい、と言う。よし、行くと言ったな、と言質を楯にし...