芸人本書く派列伝
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芸人本書く派列伝vol.25 ビートたけし『やっぱ志ん生だな!』玉袋筋太郎『粋な男たち』
落語界一の大物・林家木りんの著書が出ていた。『師匠! 人生に大切なことはみんな木久扇師匠が教えてくれた』(文藝春秋)である。ただしこの場合の大物とは、文字通り新潮がでかいことを指している。林家木りん、192センチもあるのだ。190センチのアントニオ猪木より大きく196センチのジャンボ鶴田にはわずかに及ばない。父が元大関・清國なのだから...
小説の問題vol.60「二つのロマン 重箱の隅つつき風案内」多島斗志之『汚名』 ・高野秀行『幻獣ムベンベを追え』
トリヴィビアルな知識を披露するのがはやっているらしい。たとえば「カーネル・サンダース人形の眼鏡には、度が入っている」などと。酒場の暇つぶしにいい、害のない知識である。深夜番組「トリビアの泉」あたりがその元か。この手の知識は好きなので、私もいくつか披露を。まず一つめ。 「太平洋戦争中に処刑された最高の外国人スパイと、太平洋戦争の最高戦犯と...
芸人本書く派列伝returns vo.24 山田ルイ53世『一発屋芸人列伝』『ヒキコモリ漂流記』
ちょうど五十になりました。 この一文をあるメロディに乗せて読んでしまうのは、たぶん私と同い年か、それより上の演芸ファンではないかと思う。さらに言えば、落語協会よりも落語芸術協会が贔屓だった人。 ベテラン、東京ボーイズの持ちネタの一節である。 東京ボーイズは旭五郎、菅六郎、仲八郎のトリオ芸人で、五郎がアコーディオン、六郎が三味線、八郎...
芸人本書く派列伝returns vol.23 徳川夢声『話術』
昨日は新宿二丁目にいた。ラーメン屋でビールを飲みながらぼんやりとテレビを観ていたら、阿川佐和子が出てきて、インタビューの名手として話をしていた。途中で店を出てしまったので、そのあと何を話していたのかは知らない。 「週刊文春」の「この人に会いたい」ではもう1500人に話を聞いているという。現在進行中のインタビュー連載としては最長のはずだ。その「こ...
芸人本書く派列伝returns vol.22 梶芽衣子『真実』・野末陳平『あの世に持っていくにはもったいない陳平ここだけの話』
最近は思うところがあって浪曲関連の文献ばかり読んでいる。ひさしぶりに浅草木馬亭通いも復活させ、ちょっとした浪花節ブームである。 もちろん新しい本も読んでいるのだがメルマ旬報用に題材を探していたら、オフィス北野界隈がたいへんなことになったり、〆切直前になって月亭可朝が亡くなったり、慌ただしいことになってしまった。それぞれ中途半端な形で取り...
芸人本書く派列伝returns vol.21 レツゴー正児『三角あたまのにぎりめし』
一つの家から二人以上芸の道に入る者が出るというのは大変なことである。 若いうちはなんとも思わなかったが、いざ自分が親の立場になり、目の前にまもなく成人を迎えようという子供がいるとさすがに思うところがある。といっても歌舞伎は世襲が基本であるし、五代目古今亭志ん生の長男が十代目金原亭馬生になり、次男が三代目古今亭志ん朝になった、などというのは初めか...
芸人本書く派列伝returns vol.20 春風亭一之輔『いちのすけのまくら』
いきなり私事で恐縮だが、二〇一七年十二月一杯で新宿五丁目で営業していたCAFE LIVE WIREは閉店した。といっても姉妹店のHIGH VOLTAGE CAFEというのがすぐそばにあり、トークライブなどはそちらで継続している。昨日も漫画家の田中圭一氏と、『軽井沢シンドローム』のたがみよしひさ氏について語るイベントをやったばかりである。閉店したCAF...
芸人本書く派列伝returns vol.20 『実録・国際プロレス』
「芸人本に書いてあることはみんな嘘」という表現は、たしか立川談之助『立川流騒動記』(メディア・パル)で見たのではないか。当たっていると思う。 その世界の人間でもないのに、芸人はみんな嘘つき、などと断じるつもりは毛頭ない。そうではなくて、芸人が書いた本に単一の真実を求めること自体が無理ではないか、と言いたいのである。 たとえば東京の落語家は...
芸人本書く派列伝returns vol.19 小松政夫『のぼせもんやけん』『目立たず隠れずそおーっとやって20年』ほか
(承前) 芸人のおもしろいエピソードを寄席のほうでは「ひとつばなし」と言う。楽屋話、ネタ、などいろいろな言い方はあるだろうが、要するに芸人が他の芸人を笑わせるために話すようなもののことである。小松政夫には数々のフレーズがあるが、それらの出所も楽屋のおしゃべりから生まれたものが多いようだ。前回紹介した『昭和と師弟愛』(KADOKAWA)に、彼が「...
芸人本書く派列伝returns vol.18 小松政夫『時代とフザケた男 エノケンからAKB48までを笑わせ続ける喜劇人』『師匠と師弟愛 植木等と歩いた43年』
この原稿は2017年10月10日発行の「水道橋博士のメルマ旬報」のために書いたものである。「休載のお詫び」原稿なのだが、お読みいただくとわかるとおり、小松政夫の著書に詳しく降れており、次回の原稿に続く内容になっている。お詫びの再録というのも変な話だが、例外的に次回原稿と共に載せておくことにする。 ============================...