赤旗
一覧
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール番外・赤旗連載「通勤型街道歩き」6
最近は、東海道新幹線に乗るとずっと窓外を眺めている。歩いたことがある場所を通るからだ。「あ、あそこは腹が減って大変だったあたりだ」などと思い出しているうち、目的地に着いてしまう。踏破したことで、わが町のような親近感が湧いているである。 街道を歩くと自分の背の高さで土地を記憶することになる。たとえば「天下の険」と歌われた箱根山で私が覚えているのは...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール番外・赤旗連載「通勤型街道歩き」5
通勤街道歩きは楽しいことばかりではなく、辛く感じる瞬間も、もちろんある。 たとえば街道周辺に公共交通機関がないときだ。どんなに疲れても目的地まで自分の足で歩かねばならないし、そもそもたどり着くこと自体が一苦労だ。 危険を感じることもある。日光街道の終点に近い鉢石宿周辺は、杉並木の景観が見事な土地である。それはいいのだが、人が歩くことをあま...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール番外・赤旗連載「通勤型街道歩き」4
五街道のような看板役者にはない魅力が、小規模な街道にはある。それを発見した瞬間は非常にうれしい。 川越街道は中山道から東京都の板橋宿で分岐し、そこから埼玉県川越市まで約33km。距離は短いが、内容は凝縮されていて、なかなかに侮れないのである。 中山道から分岐したあと、川越街道は賑やかなことで有名なハッピーロード大山商店街になる。街道の南部...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール番外・赤旗連載「通勤型街道歩き」3
通勤街道歩きを始めた人がもし関東圏に住んでいたら、東海道の次に目指すべきは日光街道だ。東京・日本橋から日光東照宮まで約144kmの道のりである。南は東武鉄道、北はJR東北本線が街道の近くを走っており、通うのに不便がない。だが、この便利が落とし穴にもなるのだ。 以前、この街道の草加・越谷間をえのきどいちろう氏と歩いたことがある。草加松原といって、...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール番外・赤旗連載「通勤型街道歩き」その2
十返舎一九『東海道中膝栗毛』は京都ではなく伊勢神宮に向かう話である。伊勢参りは、誰もが一度はしてみたい夢の旅だった。 私が一度目の東海道踏破を終えたのは、伊勢神宮と出雲大社の式年遷宮が60年ぶりに重なるという珍しい年であった。これは呼ばれているとしか思えず、2013年秋、私は伊勢街道を目指した。東海道四日市宿から三重県を南下していく約70kmの...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール番外・赤旗連載「通勤型街道歩き」1
小学生のとき、寝台特急さくらに乗った。真夜中に目が覚めて窓外を見たら、そこに家並みがあり、そんな時刻なのにいくつかの家には明かりがついていた。 当たり前だが、人が住んでいる、と思ったのである。日本中すべての土地に人が住んでいて、それぞれの暮らしをしている。それを全部訪ねてまわりたい、と思った。変な小学生だ。 7年前、縁があって同業の藤田香...