戸梶圭太
一覧
小説の問題vol.56 「存在の耐えられないお安さ」 戸梶圭太『トカジノフ』『トカジャンゴ』・姫野カオルコ『整形美女』
※なぜか2002年10月号の「問題小説」が見当たらなかったので、1号飛ばして11月号の原稿を掲載する。 小糠三合持ったら婿には行くな、という言葉がある。つまり少しでも財産があるなら入り婿になどなるな、という戒めである。基本的にわが国の近世近代は男系社会だったからこういう差別的な表現がまかり通っていた。しかしながら「小糠三合」という表現は...
小説の問題vol.12 沢木冬吾『愛こそすべて、と愚か者は言った』
宮部みゆきや高村薫といった実力作家を輩出した日本推理サスペンス大賞が新潮ミステリー倶楽部賞と改まってから三回目の同賞では、受賞作の他に審査員特別賞が二作出て、合計三作が刊行の運びになった。この審査員特別賞というのは受賞を逸した候補作を審査員の権限によって出版するものであり、選ばれた作品に審査員の理想が反映されていて興味深い。 今回、私が最も買う...