短篇集
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杉江の読書・『イーヴリン・ウォー傑作短篇集』(高儀進訳/白水社)
イーヴリン・ウォーの短篇で最初に読んだのは「ミステリマガジン」に訳載されたTactical Exerciseではないかと思う。第二次世界大戦によって人生を狂わされた男の話で、戦前に持っていたすべてのものを失ったジョンは、次第に妻・エリザベスへの憎悪を募らせていく。夫と妻の犯罪を描いた作品は他にいくらでもあるが、この小説を唯一無二のものにしているのはその特殊...
杉江の読書・ペーター・シュタム『誰もいないホテルで』(松永美穂訳/新潮クレストブックス)
スイスの作家ペーター・シュタムの短篇集『誰もいないホテルで』(松永美穂訳/新潮クレストブックス)には10篇が収められている。表題作は、仕事のためにホテルに籠ろうとした〈ぼく〉の奇妙な体験を描くものだ。さんざん山道を彷徨ったあげくにたどり着いたホテルで彼を出迎えたのは、客を待たせたまま食べかけのラビオリをむしゃむしゃと平らげる女性・アナだった。部屋のシャワー...